
今もなお、コロナ禍が蔓延し、Jリーグにも度々無観客試合が実施されるなど、何かと悪影響を及ぼす厳しい時代となっていますが、そんな中でも熱い戦いは繰り広げられています。
我らがヴィッセル神戸は、昨年の失点数の多さを改善すべく、激しくプレスをかけに行く姿勢、攻守の切り替えの速さ、ショートカウンターの鋭さを研ぎ澄ませ、現在12節を終えて6勝5分け1敗、失点10の5位と好成績を残しています。
果たして、このままACLへの切符を手にすることができるのか…
まずは、これまでの神戸の進化を振り返りながら、今後の課題も見つめていきたいと思います。
失点を減らす課題に真摯に向き合ってきたヴィッセル神戸

出典:https://www.vissel-kobe.co.jp/
完全に苦手意識を持ち、いつもならあっさり試合を諦め負け戦となってしまっていたはずの前節のサンフレッチェ広島戦。
なんと10年間もホームで勝利なしというのだから、いかに深刻だったかを物語っていますよね。
筆者自身、毎度試合を見ては、どこかあきらめムードで戦う気概を感じられない神戸の選手たちに、『もっと戦う姿を見せろよ!』と強い憤りすら感じてしまったほどです。
ただ、選手も一人の人間…
心が折れるくらい何度もやられてしまったら、自信すら喪失し、覇気が消えてしまうのでしょう。
正直、元磐田・ブラジル代表のドゥンガ氏のような覇気のないプレイには誰彼構わず激昂するくらいのキャプテンシーを持つリーダーが欲しかった…
しかし、ポドルスキ選手が神戸にやってくるまでは、なかなかそういった選手が出てこず、どこかあきらめムード漂う空気感だったことを、神戸サポなら誰もが知るところだろう。
さて、本題に入りますが、かつてのヴィッセル神戸なら、名前負けしても決しておかしくない相手であったサンフレッチェ広島。
しかし、ここ数年でその意識はだいぶ薄れているように感じられます。
その要因はいくつか考えられるのですが、ポドルスキ選手・イニエスタ選手の加入もさることながら、ACLで若手選手を筆頭に神戸の選手たちが自信をつけ始めたことが最も大きな要因と言えるのではないでしょうか。
特に
- DFの菊池流帆選手、山川哲史選手
- GK前川黛也選手
- MF郷家友太選手
に関しては、完全に加入当初と全くプレイの質が違って見えるほど自信みなぎって見えます。
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中でもエアバトルではほとんど負けず、『おりゃ~!』という気合の入った掛け声とともに、神戸のDFラインを押し上げてくれる菊池流帆選手の闘志みなぎるプレイには脱帽…
ドゥンガ氏のように、誰彼構わず激昂しチームメイトを鼓舞しているわけではありませんが、その分、自身のプレイでチームを鼓舞してくれていますし、彼がいればなんとか最終ラインは死守できるという安心感すら得られます。
まさに、神戸に必要なラストピースとなりうる逸材!
正直なところ、これまでの神戸は、どこか外国人選手頼みだった印象が伺えました。
しかし、この数年で大きく進化し続け、三浦淳宏監督によって、メンタルの弱い神戸はかなり薄れたようにも感じられます。
それは、菊池流帆選手を筆頭に、
- ビッグセーブ連発で神戸のゴールを死守してくれているGK前川黛也選手
- 右SBへとコンバートし、西大伍選手の抜けた穴をカバーするどころか、完全に右サイドを支配する成長すら伺えるDF山川哲史選手
- ある意味、山口蛍選手以上にピッチを駆け回り、FWからアンカーの位置まで役割をこなせるMF郷家友太選手
などの成長が、今の頭を支える屋台骨になっているからこそだと筆者は強く感じているのです。
もちろん、彼らだけが凄いのではなく、前節のサンフレッチェ広島戦で、怪我から帰ってきたアンドレス・イニエスタ選手、今シーズンから加入したリンコン選手とアユブ、マシカ選手、そして、神戸のダイナモこと山口蛍選手、神戸のエース古橋亨梧選手…
挙げたら切りがないほど、神戸の選手は個性派揃いながら、それぞれが大きく役割をこなしてくれるかけがえのない選手ばかり…
そんな選手たちが連携を取り始め、今季は上位争いに加わることが出来ています。
まだまだ、ヴィッセル神戸は進化の途中であり、メンタル面も若干不安定なところが伺えます。
しかし、神戸が手本とするあのバルセロナFCですら、最初から強豪チームとしてスペイン1部ラ・リーガで君臨していたわけじゃありません。
これから神戸はどんどん進化していくと、筆者及び神戸サポの多くが信じています。
もちろん不甲斐ないプレイをしたときには叱咤したり辛辣なコメントを投げかけることも有るでしょう。
それでも、神戸を愛しているからこそ、神戸サポは止められませんし、いつの日か、今の川崎フロンターレのように、ポゼッションサッカーの完成形を見せてくれることを期待しています。
古橋亨梧選手への期待感!
神戸に加入して3年目で、現在26歳の古橋亨梧選手は、もはや若手選手というより、神戸の中核を成すイニエスタ選手の次に頼りになる選手。
メンタル的に頼りになる選手が菊池流帆なら、結果で神戸を牽引してくれるエースストライカーというべきヴィッセル神戸の宝!
特にここ数年に渡り、セルジ・サンペール選手やアンドレス・イニエスタ選手、山口蛍選手などのロングフィードを受けて一気に敵陣ゴール前へと飛び出しゴールを決めるシーンをよく目にします。
古橋選手の良さは、縦横無尽に駆け回るスタミナと一気に駆け抜けるスピード力。
この2つのスキルが、彼をゴールハンターへと大きく後押ししているのです。
ヴィッセル神戸には、ロングカウンターの起点となるべき選手が多数ひしめいています。
そして、そんなロングカウンターの起点となるべき選手たちから、相手チームに驚異を与えるラストパスを受け、古橋選手がゴールを決めてくれる…
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例えば、前節の広島戦で彼がもたらした1点目・2点目なんてまさにそれ!
1点目は山口蛍選手からのロングパスに飛び込み、スライディングしながらゴールへと流し込み先制…
2点目はセルジ・サンペール選手からのロングパスにいち早く反応した古橋選手のシュートが敵陣ゴールに突き刺さっています。
どちらも敵陣に入り込んでいないところから、最短距離で一気にゴールへと押し込んだ結果得られた得点でした。
もちろん、セルジ・サンペール選手や山口蛍選手がいてこそのゴールであることに違いありませんが、少なからずも彼らのパスを受け一気にゴールに駆け入る古橋亨梧選手のスピードあっての功績。
- 仲間を信頼する力
- 開いたスペースへ突破する力
- 相手DFを置き去りにするスピード力
- 決定力
このいずれをもわずか3年も経たない間に高め日本代表へと駆け上がっていった古橋選手は、今年間違いなくJ1得点王になりうる存在として活躍してくれるはず。
正直、古橋選手頼みでは、かつて、イニエスタ選手頼みで、失点を繰り返してきた頃の神戸に逆戻りになってしまう恐れもあるので、あと数名は前に果敢に飛び出すFWがほしいところ…
ただ、その点に関しては、アユブ・マシカ選手やリンコン選手がその担い手になってくれるでしょうし心配は無用!
今の王者川崎フロンターレのように、どこからでもスピーディーに展開し、相手をかき回しながらゴールを奪っていく神戸へと進化してくれることを今後のJ1で期待しています。
セルジ・サンペール選手の指揮能力
古橋亨梧選手同様今年26歳のセルジ・サンペール選手も神戸に加入して3年目の選手。
厳密に言えば2019年3月加入なので、2018年の夏に加入した古橋選手とは異なり3年目に突入してそれほど間もない選手というべきでしょうね。
まぁ、そんなことはさておき、サンペール選手が加入したばかりの神戸は、連携もあまり取れておらず、彼の両脇を狙われ、簡単にボールを失っては失点を繰り返してきました。
当時の監督インタビューで良く、『自滅してしまった…』という声も聞かれましたよね。
しかし、今年は、山口蛍選手とのダブルボランチを組み、さらに井上潮音選手が、ピッチを駆け周り守備に奔走してくれているおかげもあって、サンペール選手が、本来のタクトを振る仕事に専念できています。
また、彼自身ボールを失わなくなったことも大きく、古橋選手を始めとする攻撃陣にラストパスをいくつも供給できていることが、神戸を強くした大きな要因となっていますね。
イニエスタ選手に対して、ピッチ上の監督という表現をされるサッカーファンも少なくありませんが、ある意味、その役割はセルジ・サンペール選手にこそふさわしい言葉です。
まさに、ピッチ上のコンダクターとして、360度あらゆる角度からゲームを組み立てゴールにつながる最短のパスを供給してくれるので非常に助かります。
前線を駆け抜けるFW古橋亨梧選手や、最終ラインを統率し固い守備を誇るDF菊池流帆選手に並び、神戸の中軸を支えるMFセルジ・サンペール選手のコンダクター能力は絶対に無くてはならない存在。
今後もピッチ上で指揮をとり、ゴールに繋がるラストパスをたくさん供給してほしいと、サンペール選手の活躍に期待しています。
頼りになる新外国人選手たち
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正直、怪我から復帰したばかりのアンドレス・イニエスタ選手同様、まだ合流してそれほど月日が経っていないアユブ・マシカ選手とリンコン選手に関しては、コンディション不足が否めません。
なので、試合に出られるとしても途中出場からの10分~20分がいいところではないでしょうか。
ただ、マシカ選手の柔軟なフィジカル力やスピード力は古橋選手と並べたら驚異を与えてくれますし、リンコン選手もフィジカルの強さは先日の広島戦で見せてくれています。
先日のルヴァンカップFC東京戦のように、フルタイム出場する機会を増やし、コンディションを高めるにつれて、今後、神戸の飛び道具として相手チームに脅威を与えることは間違いありません。
それだけに、イニエスタ選手や古橋選手、セルジ・サンペールたちとピッチ上でどのような化学反応を魅せてくれるのか非常に楽しみにしています。
神戸の守備を安定させる役割を担う山口蛍選手・井上潮音選手の働き
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間違いなく神戸の守備を強固なものにしてくれているのは、先程からお話している通り、DF菊池流帆選手の功績がかなり高いです。
しかし、山川哲史選手の成長力も含め、菊池選手以外にも神戸の失点を減らす大きな役割を担ってくれている選手はいます。
その代表が、山口蛍選手と井上潮音選手です。
特に山口蛍選手に関しては、ピッチ上あらゆる場所に顔を出し、ボールを奪い取ってくれる活躍を見せてくれています。
古橋亨梧選手同様、90分間ピッチを駆け回るスタミナは尋常ではありません。
また、まだまだ荒削りなところはありますが、今季から加入した井上潮音選手も、左右両サイドだけでなく、縦横無尽にピッチを駆け回り、神戸の危機を何度も救ってくれています。
もちろん、守備だけでなく攻撃のアクセントにもなってくれているので、彼の貢献力は非情に高いです。
このように、ポジションが違うから守備や攻撃にそれほど関与しなくていいとかいう考えの選手が少なくなったことが、今のヴィッセル神戸を支える原動力とも言えます。
その考えを植えつけてくれたのは、他ならぬアンドレス・イニエスタ選手であり、長きに渡りポゼッションサッカーを根付かせてきた結果ではないでしょうか。
もちろん、ただポゼッションを高めればいいというわけではありませんが、我慢しながら戦ってきたこの数年で、見違えるように神戸は生まれ変わってきたことだけはハッキリ断言出来ます。
今後も、攻撃的な意味でのポゼッションサッカーを強固なものとして、J1での激しい戦いを勝ち抜いていってほしいと願っています。
神戸の今後の課題は若手の成長力!
さて、最後に、ヴィッセル神戸の今後の課題にも触れていきましょう。
ハッキリ一言で行ってしまえば、ヴィッセル神戸の今後の課題は若手の成長力にあると言えます。
『先程、若手が自信を持ってプレイできるようになったと言ってたのに矛盾した発言じゃない?』とおっしゃられるかもしれませんが、それは、
- 前川黛也選手
- 菊池流帆選手
- 山川哲史選手
- 井上潮音選手
- 郷家友太選手
などレギュラークラスの選手に限った話で、
- 初瀬亮選手
- 佐々木大樹選手
- 櫻井辰徳選手
- 安井拓也選手
- 増山朝陽選手
など、普段レギュラーとして起用されていない事も多い若手選手たちに対しては、まだまだ不満な部分も多いのが現状。
やはりフィジカルが弱く簡単にボールを失うこともあれば、弱気になってボールを下げてしまうなんてこともしばしば…
もちろん、すべてのシーンでというわけではありませんが、もう少し果敢に攻める姿勢を持ってほしいというのも正直なところですね。
先日の広島戦で例えるなら、古橋選手が相手GKに猛スピードでプレッシャーを掛けているシーンが多数見られたのに対して、同じFWとして出場した佐々木大樹選手のプレッシャーが明らかに少なかったことがその象徴!
確かに、古橋選手が追いかけているから自分は控えようという話ならまだ理解できます。
しかし、佐々木大樹選手は、古橋選手が追いかけていない時でさえプレッシャーをほとんどかけていませんでしたし、自信を持って攻撃的に仕掛けられていないのではという様子も伺えます。
もちろん、すべてが自信喪失なプレイであるとは言いませんし、調子のいい時は、ACLの蔚山戦のように、巧みなドリブルや豪快なシュートも多数見せてくれています。
荒削りながら優れたところはたくさんあるのは誰もが認めるところですが、まだまだ成長途中なので、ACL出場での経験も踏まえながらもう一皮むけてほしいのです。
そして、彼ら若手選手と中軸・ベテラン選手が融合し進化していけば、今の川崎に負けない強豪チームとしてヴィッセル神戸はタイトルを狙える位置で戦い続けることが可能となるでしょう。
まだまだ発展途上ではありますが、それだけに将来に期待がおけるヴィッセル神戸なので、今後もともに戦い応援という意味でサポートしていきたいと思う次第です。
まとめ
今回は、一人のヴィッセル神戸サポの目線から見える、今の神戸の強さの秘訣と、今後の課題において記事にまとめてみました。
今の神戸には間違いなく昨年のACL出場での自信がみなぎっています。
もちろんすべての選手というわけではありませんが、それでも
- 菊池流帆選手
- 山川哲史選手
- 前川黛也選手
の急成長は神戸を今のポジションに押し上げる大きな後押しとなったことに違いありません。
まだまだ荒削りなところはありますが、若手と中軸・ベテラン選手が融合し、ベンチ外の選手も含め一致団結で、今後の厳しいJ1での戦いを駆け抜けていってほしいですね。